台風3号は小笠原と八丈島の間の海域を通過する予報です。梅雨時期の台風接近は各地で大雨になることがありますので、台風の暴風対策だけでなく大雨や浸水にも十分に注意しましょう。最初に台風3号の最新の状況を見ていきます。
台風3号の動き(最新)
2023/6/12 9:00
太平洋岸では雨が強まったり弱まったりしながら、雨が降り続きます
梅雨前線は東日本から西日本の太平洋岸に停滞してます。日本の南海上を北東に進む台風3号周辺から暖かく湿った空気が前線に向かって流れ込み、前線付近では雨が強まりやすくなっています。紀伊半島から四国の太平洋岸、東海地方では本降りの雨になっています。

台風3号の情報
方向・速さ:北東 40km/h
中心気圧:985hPa
最大風速:25m/s
最大瞬間風速35m/s

2023/6/11 12:00
6月11日(日)9時現在、強い台風3号(グチョル)は南大東島の南を北北東に進んでいます。
明日12日(月)にかけて台風周辺の湿った空気が梅雨前線に流れ込み、局地的に雨雲が発達する見込みです。

▼台風3号 6月11日(日)9時
中心位置 南大東島の南約320km
強さ階級 強い
移動 北北東 25 km/h
中心気圧 970 hPa
最大風速 35 m/s (中心付近)
最大瞬間風速 50 m/s

2023/6/10 9:00
強い勢力の台風3号(グチョル)はフィリピンの東にあって、北に進んでいます。
中心付近の気圧は970hPa、最大瞬間風速は55m/s、強い勢力を保って北へゆっくりと進んでいます。明日の9:00には南大東島の南約370km付近に達するとみられ、やや衰えながらも北北東へ進む見込みです。

今後は次第に進路を北東に変えて、来週前半には日本の南を通過する予想です。次第に勢力を落とす見通しですが、伊豆諸島近海の緯度でも暴風域を維持したままの可能性があるため、注意が必要です。
日本の南方海上の海水温がまださほど高くないため、今後急速に発達する可能性は少ないものの、台風から流れ込む南からの湿った風の影響で、本州付近に停滞している梅雨前線が刺激されて、先週末に続いて大雨が降る恐れがあります。
進路予想の信頼度は比較的高いものの、わずかな進路の変化次第で、伊豆諸島・小笠原諸島、本州方面などへの影響が変わるため、今後も随時最新の台風情報をご確認ください。
米軍の管轄するJTWC(Joint Typhoon Warning Center:合同台風警報センター)の予想でも、若干のズレはあるものの、概ね同様のコースを辿るという予報が出ています。両者の予報がこれくらい似ているので、今後のコースについてはこのような傾向で推移するものと思われます。

2023/6/9 6:00


前線の種類(温暖前線・寒冷前線、停滞前線)について
ではなぜこの時期の台風接近が大雨被害をもたらしやすいのか見ていきます。
天気予報で天気図を見ていると、高気圧や低気圧とともに「前線」がよく登場します。前線は低気圧と一緒に出てきますが、高気圧に全線が伴うことはありません。
これは低気圧の性質のためです。低気圧とはそもそもが”上昇気流”のことです。地表の空気が空に向かって上昇するので、地表の空気が薄くなって「低気圧」になるわけです。
逆に「高気圧」は上空から地表に向けて吹き付ける下降気流です。上空から地表に向けて空気が吹き下ろすので、地表の空気が濃くなって「高気圧」になります。
低気圧が来ると天気が悪くなるわけ
低気圧が来ると一般的に曇ったり雨が降ったり、天気が悪くなります。どうしてかというと低気圧の上昇気流で地表付近の暖かい空気が冷たい上空に押し上げられると、上空で空気が冷やされるので雲ができるからです。どうして空気が冷やされると雲ができるのかというと、冷やされた空気はたくさんの水分を溶かしておけなくなって、水蒸気が水の粒(雲)になってしまうからです。
逆に高気圧は上空の冷たい空気が暖かい地表に向けて吹き下ろすので、空気の中に水分がたくさん溶けるようになるので、雲は消えて無くなり、地表は乾燥するというわけです。
温暖前線と寒冷前線
こんな天気図を見たことがあると思います。

低気圧の中心から生えている青い三角矢印の線が「寒冷前線」で右側に生えているのが「温暖前線」です。「前線」というだけあって、どちらも冷たい空気と暖かい空気がぶつかってせめぎ合っているところです。戦争の前線と同じ意味で、空気の「最前線」です。
「寒冷前線」では北西から南東に向かって冷たい空気が反時計回りで吹き込みます。「温暖前線」では南西から北東に向かって暖かい空気が反時計回りで吹き込みます。
冷たい空気と暖かい空気がぶつかり合うと、暖かい空気は冷たい空気の上(上空)に押し上げられて上昇し、冷やされて雲ができます。だから前線に近くは天気が悪いのです。絵にするとこんな感じです。

こんな形で前線ができているということは、地表の空気は低気圧を中心にして反時計回りに回転していることになります。
上の天気図では低気圧が2つありますが、左側の低気圧は台風が衰えてできた低気圧で、周りの空気は全部暖かいのでまだ前線はできていません。次第に周りの空気が冷やされてくるとこちらにも前線ができます。
この形の低気圧は、上空1万メートル付近を吹く”ジェット気流”にながされて西から東に移動していきます。いわゆる”移動性”というやつです。
移動する雨雲と移動しない雨雲
梅雨時期に見られるのは「停滞前線」です
一方で梅雨の時期に多く見られるのが、下図の赤と青が入り乱れた「停滞前線」です。「梅雨前線」とも呼ばれます。これは一般に低気圧に付随している前線とは違って、北の冷たい空気(寒気)と南にある暖かい空気(暖気)がせめぎ合っている状態です。梅雨の時期や”秋の長雨”の時期など、季節の変わり目によく見られる前線です。

この時期は寒気と暖気の強さが拮抗(きっこう)しているので、前線もあまり移動することがありません。なので「停滞前線」と呼ばれます。
梅雨前線や秋雨残線は南北には多少動きますが、東西にはあまり移動しないのが特徴です。そもそもあまり移動しない前線に、台風などが近づくと、南から暖かく湿った空気が前線に向かって吹き込みます。これが天気予報でよく聞く「前線が刺激される」状態です。

もともと冷たい空気と暖かい空気がぶつかり合って不安定なのが前線ですが、そこに暖かく湿った風が吹きこむのですから、前線に南から強力な援軍が加わるようなものです。そもそも天気が悪かったところに湿った空気が吹き込むので大雨になるわけです。しかも停滞前線はあまり移動しないので、前線に沿って大雨が降り続けます。いわゆる「線状降水帯」というヤツです。
ジェット気流と台風
台風は熱帯の暖かい海で発生するので、全体が暖かい空気に取り囲まれています。ですから前線を伴いません。前線は冷たい空気と暖かい空気がぶつかり合うところです。
停滞前線に関係のない台風や低気圧は、上空を吹くジェット気流に流されて西から東に移動します。日本の天気は「西から良くなったり悪くなったり」するのはこのせいです。
でも停滞前線は低気圧や台風のせいでできるのではなく、季節の変わり目の、北の冷たい空気と南の暖かい空気の境目に発生します。
ジェット気流が西から東に吹いていても、北の空気はいつも冷たく南の空気はいつも暖かいのでジェット気流にはあまり影響を受けないわけです。だから梅雨や秋雨の時期にはちょっとしたきっかけで大雨が続くので注意が必要なのです。
台風3号の進路と大雨の予想(2023/6/6の予報)
ではこの先、台風3号の進路はどうなるのでしょうか? 2023/6/6の予報を見てみましょう。

上の図は「アメリカ海洋大気庁」と「ヨーロッパ中期予報センター」が出している予想です。まだ不確実な要素が多いので、最終的にどんなコースを辿るのかは未知数ですが、先週の台風からあまり時間も経っていないので、ジェット気流の流れもあまり変わっていないことが予想されます。
それを考慮すると、先週の台風2号と似たコースを辿ることが予想され、沖縄の東海上から小笠原方面に向かうコースが濃厚です。
これが関東地方に近づくかどうかはまだ予断を許しませんが、いずれにしても先週の大雨で各地の地盤が緩んでいて、山などに染み込んだ雨がまだほとんど抜けておらず、少ない量の雨でも大きな被害をもたらす可能性があります。だから「今回は台風の直撃はなさそうだし」と油断することは禁物です。
台風の接近はある程度、前もって予想できますが、土砂崩れや川の氾濫はほとんど予見できません。先述したように、台風から離れていても南の海上から前線に吹き込む湿った南風が、毎年のようにこの時期に災害をもたらしています。今回は前回よりもさらに早い避難行動が求められます。
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