電気料金値上げで私たちの暮らしはどうなる? なぜ値上げする会社としない会社があるのか?

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大手電力会社7社が電気料金の値上げを申請

 政府は大手電力7社が申請していた電力料金の値上げを了承し、6月の使用分から電気料金が値上げされる見通しとなりました。昨今の食料品、燃料費を含めた値上げが続く中でより一層家計に大きな負担がのしかかってきそうです。値上げされる電力会社と値上げ率は以下の通りです。

・北海道電力 +20.1%
・東北電力 +21.9%
・東京電力 +15.3%
・北陸電力 +39.7%
・中国電力 +26.1%
・四国電力 +23%(原発稼働中 伊方原発)
・沖縄電力 +36.6%(原発なし)

一方で今回値上げを申請しなかったのは大手電力会社10社のうち3社で、

・中部電力 なし(すでに価格転嫁済み)
・関西電力 なし(原発稼働中 美浜原発・大飯原発・高浜原発)
・九州電力 なし(原発稼働中 玄海原発・川内原発)

となっています。その理由として値上げをする7社のうち5社はいずれも管内の原子力発電所が停止中で残る2社のうち沖縄電力は原発自体を持っていません。しかし伊方原発が運転中の四国電力は燃料費の高騰を理由に25%の値上げを申請しています。原発が停止中のため、その分の足りなくなった電力を主に火力発電で補っていることと、このところの円安や世界情勢の不安で輸入している燃料費が高騰していることを挙げています。

なぜ残る3社は今回値上げを申請しなかったのか?

 では残る3社はなぜ今回値上げを申請しなかったのでしょうか? それには現在の原発の稼働状況が大きく関わっています。まずは中部電力ですが、浜岡原発などの管内の原発は運転を停止しているものの、中部電力では今回の値上げ申請前に管内の送配電と販売を担っている中部電力ミライズが既に値上げを実施して原材料価格の上昇分を価格転嫁していることが挙げられます。

 また関西電力と九州電力では、美浜原発・大飯原発・高浜原発(いずれも関西電力)、玄海原発・川内原発(いずれも九州電力)が一部とはいえ現在稼働中のため、化石燃料高騰の影響はある程度抑えられていると考えられます。そんな現状を考えると今までの日本の原子力政策は私たちの生活のかなり深い部分まで入り込んでいるのだと改めて考えさせられます。

福島第一原発の事故にみる原発の功罪

 2011年の東日本大震災で福島県にある福島第一原子力発電所が地震による被害で全電源を喪失し(”発電所が停電”という事態に最初は?と思いましたが)、原子炉が冷却できなくなったために炉心溶融(メルトダウン)、津波による原子炉建屋の損壊によって冷却水と核燃料が化学反応を起こして原子炉建屋が水素爆発を起こして核物質が大気中に放出されてしまうという事態を招きました。それまで「原子力は絶対に安全」と言い続けてきた東京電力と政府の「安全神話」が崩れ去った瞬間でした。

 その後の原子力発電に対する世論の反発は皆さんもご存知の通りです。国内のすべての原発の運転を中止して点検をやり直し、原子力規制委員会が安全が確認できた原発から再稼働を認めるというものです。その後も建設後40年経ったら廃炉にするはずだった原子炉が「60年までならいいよ」と言い始めたり、「でも運転を止めていた期間は稼働期間には含めなくていいんだよね」などと言い出して、今でも喧々諤々の議論と裁判が続いています。

 それまで日本の社会と暮らしが原発に頼ってきたことは否めません。原油や天然ガスがほとんどなく輸入に頼らなければならない日本にとって(核燃料もほとんどが輸入ですが)、当時は福島の事故前で原発の維持管理費を軽く見ていたこともあり、原油に比べて比較的安価な核燃料に頼ることは自然なことです。私が子供だった50年前には、「世界中の石油はあと30年で掘り尽くされる」と言われていましたから、日本のエネルギーに対する危機感はとてつもなく大きなものでした。

そこに現れたのが”原子力発電”です。「原子力明るい未来のエネルギー」と言われ、国内発電量の約25%が原子力発電に置き換わったのです。

 福島の事故を受けて沖縄を除く全国の原発で再点検や安全設備を充実させてきました。その結果、一部の原子炉では再稼働まで漕ぎ着けました。原発は絶対安全という「安全神話」はもはや誰も信じなくなりましたが、自然災害やテロなどによる攻撃からはある程度の安全が確保できるようになったのではないかと思います。

だからといって安心していいというレベルではありませんけどね。でもアブナイ、アブナイと心配ばかりしていても日本の未来は見えてきません。私は決して原発推進派ではありませんが、風力・太陽光などの自然エネルギーや火力などとバランスをとりながら当面は原子力も取り入れていくしか方法はないのかなと感じています。

 それとは別に根本的な問題が残っています。政府はすぐに隠そうとしますが「使用済み核燃料」、いわゆる「核のゴミ」問題です。現在国内では必死になって”最終処分地”を探していますが、積極的に「うちが引き受けてもいいよ」と手を挙げている自治体は一つもありません。

誰だって自分の足元に”アブナイ”ものを埋められたら気分のいいものではありません。できることなら「どこでもいいからどこか自分から遠いどこかの場所」に埋めてくれればいいと考えているのでしょう。

北欧では地下深くに最終処分場を建設して処理を始めていますが、だからといって「日本で使った核のゴミ」まで引き受けてくれるわけがありません。どこに行っても土地は有限なのですから。

日本は核のゴミ以外のプラごみさえも東南アジア諸国に送りつけて終わった気分になっていましたが、東南アジア諸国にも「もう日本からのプラごみは受け付けないからね」と言われてしまい困っているのが現状です。

出口対策が曖昧なまま何も考えずに計画を進めてしまうのは日本人の悪いところです。自分の家の中だけが綺麗なら他の家を汚してもいいと思っているのでしょうか? ”クールジャパン”もあまりアテになりません。

まとめ

 今回の電気料金値上げは値上げラッシュが続く今の日本の家計に大きな打撃になるでしょう。平均的な家庭でも月額数千円の支出が増えれば食費を減らすしかありません。住宅ローンや家賃、税金は減らせませんから大きく減らせるのは食費です。

その食費も食料品の数10%の値上げが続き、さらに収入も増えない中、減らすところがないくらいに引き締めているのが現状です。これ以上の削減は「お腹が空いていても我慢する」くらいしかなさそうです。いつか明るい未来が描けるような社会がやってくることを黙って祈るばかりです。

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